魂のつぶやき


魂の訴え


積極財政論が浸透せず支持されない理由

結論から言えば、日本人の腐敗に対する嫌悪感。

 

デフレやスタグフレーション等の不況時に、国家による財政政策によって景気を底上げする手段は正しいだろう。

金融緩和をしても、需要がなければカネは回らないし、民間がカネを使わない中で国家がカネを使わなければ、社会全体のカネはますます回らなくなる。

よって、社会の景気を良くするために国家がカネを使う方向性は間違っていない。

また、国家の借金も通貨発行権によって事実上返済義務が相殺されるのも既知の通りで、国家がカネを借りることのできる限度は、金利の上昇かインフレ率の上昇であって、債務の累積ではない。

 

以上の事を前提にこれから話を進めていく。

積極財政政策を遂行する手段としては、公共事業の増加や成長産業への支援が挙げられる。

この政策がデフレ、もしくはスタグフレーションである今の我が国の経済状況では、一番効果のある手段であるにもかかわらず、この積極財政政策の理解度は極めて低い。

なぜだろうか。

 

ほんの数か月前の安倍内閣は、何があってもその権力は全く動じないものと思われていた。

自民党内にも野党にも、対抗しうる力がほとんどない状況が何年も続いた。

しかし、森友問題や加計問題に端を発し、みるみるうちにその権力は揺らいだ。

すぐにメディアのせいにしたがる保守派が多いが、この論説は本質ではない。

同じイデオロギーを共有する、稲田朋美や加計学園等を含めた「お仲間」が過剰に擁護され優遇され、権益がその「お仲間」に流れている事に対する、政権への不信感が、権力を揺るがしたのだ。

安倍晋三個人の性格によるところも大きいだろうが、権力が長期化すると腐敗するという原則がここに表れた。

 

権力の腐敗は組織に対する信頼性を著しく損なうのである。

 

積極財政政策は国家権力がカネを使う政策なので、自ずと権力の持つ権益が特定の人間にもたらせる事になる。

アベノミクスが始まって以降、金融緩和政策から抜けられなくなるのと同じように、積極財政政策も抜けられなくなる可能性が高いだろう。

この財政政策によって恩恵を受ける人間は、その恩恵無しでは生きていけなくなるからだ。

経済が過熱し、インフレ率が上昇し、景気が良くなったとしても、お国のためのその恩恵を自ら手放すような「お人よし」はいくら日本人であっても極々少数であろう。

その恩恵こそ、彼らが生きていくための生命線なのだから。

 

経済とは、飯が食えるかどうかが一番なのであって、これが「保守」の本質なのだ。

 

財政政策によって恩恵を受けている人間たちは、外から見れば「既得権益集団」になる。

よく言う「既得権益を潰せ」という声は、単なる妬みか、自分が権益を得たいという欲求そのものである。

やがてエゴとエゴのぶつかり合いとなり、政争となる。

平成の時代、よく見てきた光景ではありませんか。

積極財政政策とは、こういったリスクを持つ政策であり、権力の腐敗と密接に結びつく事を、日本人は経験的に分かっている。

これはメディアによる洗脳でもなんでもなく、事実である。

積極財政政策を推進する論者の皆さんは、こういった懸念を払しょくしなければならない。

 

そもそも日本の現代が民主政治であると考えない方が良い。

自民党という名の、口が上手い集団による金権政治である。

民主党によって政権交代があったじゃないか!という声が出てきそうだが、民主党は過去自民党からはみ出た連中が大企業労組の基地外サヨクの連中とくっついた政党であり、元をたどれば自民党である。

50年以上権力を維持し続けてきた自民党が腐敗していない訳がないのは、誰が見ても明らかでしょう。

 

ここ数年、大企業が相次いで経営危機に陥ったのも、権力の腐敗に他ならない。

企業内の権力は、政治家の権力よりも、えげつなく強力だ。

これも結局、労働者が経営者に飯のタネを握られているからだ。

この平成の世で、企業は利益を還元すべき従業員に回さず、経営者の野心と株主に対する承認欲求で海外投資に終始してきた。

権力の私物化こそ、腐敗の最たる結果だ。

 

安倍晋三も、このような経営者たちの心理に近い。

己の政治的野心と、外国人に対する承認欲求が、安倍晋三自身の政策へ密接に関連している。

そこに「日本人の安寧のため」という目的は無いと断言しても過言ではないだろう。

 

企業であれ、国家であれ、権力の腐敗は組織そのものを弱体化させるのだ。

 

じゃあどうすればいいって?

国家が経済をかじ取りする手段は「税」が基本だ。

生産の付加価値に税を課す消費税を辞めて、法人税と所得税を上げろ。

カネ持ってる奴らは、どんどんカネを使うか、どんどん税金を払え。

この数十年間繰り返し変えてきた税制を、元に戻して累進性を強化しろ。

これで、カネを持っている連中ほどカネを動かさざるを得なくなる。

ちなみにカネに余裕のない人たちは、黙っていてもカネは良く動く。

日本中のカネが回りだす予感がしませんか?

日本経済の不況は、格差拡大が全て元凶なのだ。

 

ただし、金権政治たる今の日本政治に、これが出来るかどうかは甚だ疑問。

金権政治だからこそ、カネが権威になり、カネを貯めこみたがるんだから。

金権政治の中で、自ら動かすことのできるカネの量こそが権力の担保となる存在なのだから。